願いは叶う
私は、大家が私たちの部屋から出ていくと、母に話しかけた。


「お母さん……、どうしようね……」


母はうつむき、下を向いたまま、何も言わずにいた。


「年末に……、お金を貸してくれるところなんてね……」


私は、母の気持ちを推し量り、遠慮がちにそう言った。


「大家さんだって、ここを出ていけとは言わないよね……」


私は、弱々しい母が不憫でならなかった。


母は、自分ができる限りのことをしていたが、一度まとわりついた貧乏神を振り払うことはできなかった。
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