願いは叶う
私は、ゆっくりとドアが開いていく様子を、まばたきもせずに見ていた。


電話の一本もやらずに、突然やってきた私を父はどう思うだろう。


玄関のドアが開かれて、私はドアの向こう側にいる人に目をやった。


でも、ドアの向こう側にいたのは、私の予想に反して、父ではなかった。


私は、アッと息をのんで、口元を押さえた。


私が目を向けた先には、四十代の化粧が厚い、長い茶髪の女性が立っていた。


〈 もしかして、この女の人が…… 〉


私は少し落ち着きを取り戻し、その女の人に顔を向けた。


〈 母が言っていた、あの水島亜希子…… 〉
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