願いは叶う
私はその女性を前にして、言葉が出なかった。


もしかしたら私は、場違いなところに来てしまったのだろうか。


私が不安な気持ちになると、私の心臓は、ドキドキと大きな音を立てて動き出した。


「あなた……、誰?

何か用事があるのかしら?」


何もしゃべれないまま立っている私に、水島亜希子が話しかけてきた。


私はこのまま、この場所から走り去りたかったが、私にはそれをすることができなかった。


〈 お母さんは、きっと私を待ってる…… 〉


私は、不安な気持ちを振り切って、水島亜希子の顔を見つめて言った。


「あのう……、この部屋に寺田幸治はいるでしょうか?」
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