願いは叶う
私は、水島亜希子を見つめながら、落ち着かない気持ちで彼女の言葉を待った。


水島亜希子は、玄関先に立っている学生服姿の私を不審がって見ていた。


でも私は、大人の冷たい視線を感じても、その場を立ち去るわけにはいかなかった。


母は、私が支えなければ、生活をしていくことができないから……。


冷たい風が吹いて、私が思わず身震いしたとき、水島亜希子は口を開いた。


「寺田幸治ならこの部屋にいるけれども……。

あなたお名前は?」


「私は……」


私は、不安な気持ちを抱えながらも、水島亜希子の顔をじっと見つめた。


「私は、寺田小夜子です。

私、寺田幸治の娘です」
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