願いは叶う
私は、九年ぶりに父を見た。


上下黒のスウェット姿の父は、以前よりも痩せているように思えた。


頭は、白髪混じりで薄くなり、眉間にできたシワは、二人の間に長い時間が過ぎたことを証明していた。


父は、確か今年で四十五歳。


長い時間が過ぎてしまえば、親子の間にあったわだかまりが消えてなくなってしまいそうだが、私の中では、父への強い憎しみが未だにはっきりと残っていた。


「小夜子か……」


父が水島亜希子の後ろから、表情も変えずにそう言った。


私は、冷たい視線を父に送るだけで、父に何も言えなかった。


「どうして、ここに来たんだ?」


父のその声は、私を心配している声ではなく、感情のこもっていない乾いた声だった。


私は、父に冷たい視線を送ったまま、抑揚のない声で、ポツリと父に言った。


「私は今日、あなたに話したいことがあってここに来たの」
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