願いは叶う
私が父に言葉をかけたあと、まるで二人の時間が止まってしまったかのような沈黙が流れた。


私と父が会わなくなってから、九年間もの長い時間が流れてはいたが、私の中で父に対する嫌悪感は消えなかった。


私は、父とは他人でいたい。


だけど、私にはどうしても今からやらなくてはならないことがあった。


〈 父に、私たちの現状を知ってもらうこと。

父からお金をもらうこと 〉


私には、父に言わなくてはならないことがたくさんあるのに、私は父に何も言えずにいた。


「話があるなら、中に入ったら?」


父の前に立っていた水島亜希子が、低く冷めた声で私に言った。


私は、そう言った水島亜希子に目を向けて思った。


父は、この場末のスナックで働いていそうな派手なおばさんのどこを好きになったのだろう?
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