願いは叶う
「余計なことを言うな!」


父は声を荒げて、水島亜希子に言った。


この乱暴な声、この横暴な態度は、私が嫌いだったあの頃の父と変わらなかった。


私の頭の中に、父が母を殴っていたときの記憶が蘇った。


〈 父は私を払いのけて、泣いている母を…… 〉


「小夜子、待ってろ。

話は外でする」


父はぶっきらぼうに私にそう言うと、アパートの奥の部屋に入っていき、スウェットの上にジャンバーだけを羽織って、玄関に戻ってきた。


そして、玄関で履き古した白いスニーカーを履くと、私と目も合わせぬまま、アパートの外へと出て行った。
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