願いは叶う
十二月も終わろうとしているその日の夜は、とても冷たい風が吹いていた。


冷たい風が吹く度に、体が震えるような寒い日の夜なのに、部屋の中にすら入れてくれない父に、私は昔のままの父を感じた。


〈 この人は、横暴で、身勝手で、私の母を見捨てた人…… 〉


父は、アパートから少し離れた人気のない街灯の下で立ち止まり、私と向き合った。


「小夜子、俺に何の話があるんだ」


昔と比べると老け込んだ父が私に言った。


私は、父のその言葉に下を向いてしまったが、言いずらいことでもやはり言わなくてはならないことが、私にはあった。
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