願いは叶う
「すみません、ありがとうございます」


私はそう言ってバッグを受け取り、山村武士の顔を見つめながら、1オクターブ高い声でその言葉を言った。


「あれ……。

あのう、もしかして?」


私はまるで女優のように表情を作り、信じられないと言いたげな顔で山村武士を見つめた。


山村武士もそんな私の顔を見つめながら、何かを思い出そうと考えていた。


するとしばらくして、山村武士の私を見ている顔がパッと明るい表情に変わり、山村武士は私が思い描いたシナリオ通りのセリフを口にした。


「あのう、もしかして……。

あなたは、寺田小夜子さんですか?」
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