願いは叶う
山村武士の口から私の名前が出たとき、私は温かい幸福感に包まれた。


もう何年間もの間、会わずにいた山村武士の記憶の中に、まだ私は存在していた。


私はそのことがうれしくて、思わず涙を流してしまいそうになったが、今ここで私は泣くわけにはいかなかった。


私は、今始まったばかりの山村武士との物語を二人が結ばれる形で完結させなくてはいけなかった。


私は潤んだ目で、じっと山村武士の顔を見つめた。


私は山村武士に、中学生時代とは違う寺田小夜子を見て欲しかった。
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