願いは叶う
強い雨が降り、凍えるような寒い朝に、私が学校の三階の廊下から見たのは、高級車で学校に送られてきた桜井由美の姿だった。


桜井由美は、私が欲しいものをすべて持っている私の憧れだった。


私だって、高級車で学校に来てみたい。


私だって、普通の高校に進学したい。


私だって、たくさんある選択肢の中から自分の夢を選びたい。


もしも自分が、あの桜井由美だったなら……。


そのことを考え始めると、私の人生にはないたくさんの選択肢が、私の目の前に次から次へと溢れ出してくる。


私は、学校の先生になれるかしら。


私は、美容師にもなれるかもしれない。


私はそれとも、ピアノの先生になるのかしら。
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