願いは叶う
空耳ではなく、はっきりと私はその声を聞いた。


私は恐怖に押し潰されそうになりながら、ゆっくりと部屋の隅々にまで目をやった。


この部屋には、私以外の誰かがいる。


それは、ソファーの影か、テーブルの下か、天井に張り付いているのか、私にはわからなかった。


でも、確かにこの部屋に悪霊が入り込んでいる。


〈 あなたさえいなければ…… 〉


女の低く、薄気味悪い声が、私の耳に入り込んだ。


私は、不安な気持ちと恐ろしさを紛らわせようと、首にぶら下げた護身の御守りを両手で握りしめた。


そしてそのとき、雷鳴が轟き、稲光が部屋を明るく照らしたとき、私はついに悪霊の姿を見つけた。


リビングの消えてしまったはずのテレビの画面に、血まみれで、青白い、不気味な女の生首が写し出されていた。


そしてそれは、紛れもなく、バラバラに切り刻まれて殺されたあの野沢恵子の生首だった。
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