願いは叶う
あのとき私は、野沢恵子を殺すだけで良かった。


それだけで、私の願いは叶うはずだった。


それなのに私は、野沢恵子の体に大きな斧を何度も何度も振り下ろし、バラバラに切断した。


私の行動は常軌を逸し、明らかに間違っていたが、私の荒んで乱れた感情は、決して正しい答えを求めてはいなかった。


野沢恵子は、私が一番欲しくて、大切に思っている山村武士に愛されていた。


この右手が、彼の手を握った。


この左手が、彼の髪を触った。


この右足が、彼の体に絡んだ。


この左足が、何度も彼に愛された。


野沢恵子への激しい嫉妬が、私の理性を狂わせていた。


私は、野沢恵子の体を傷つけたくて仕方なかった。
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