願いは叶う
這いずりまわる左腕が、私の足元をゆっくりとなぞるように進んでいた。


そしてその切断された左腕は、ゆっくりと私の腰の方へ、さらには私の胸の方へと、じわりじわり寄ってくる。


〈 助けて! 〉


私の心は叫んでいた。


〈 殺される前に、誰か助けて! 〉


野沢恵子のかん高い笑い声がさらに大きくなって、部屋中に響いた。


彼女は、この部屋の中で行われる殺人ショーのたった一人の観客だった。


彼女はそのときが訪れるのを待ちきれず、目をギラつかせ、薄気味悪い笑みを私に見せている。


這いずりまわっていた血まみれの左腕が、私の首のあたりでピタリと止まった。


私はゾッとして目を見開き、その切断された左腕を見た。


血で赤く染まった青白い切断された左腕は、五本の指を大きく広げ、今にも私に襲いかかろうとしていた。
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