願いは叶う
大きく指を広げた血で赤く染まった青白い左手が、私の首に飛びかかるように襲いかかってきて、私の首を絞め上げた。


首を絞められた私は息が出来なくなり、血まみれの左手を払いのけようと両手で握りしめた。


血まみれの左手が首を絞める力は徐々に強くなり、私は苦しくて両足をばたつかせた。


〈 百合子。武士さん。お母さん……。 〉


私は、必死で血まみれの左手を握りしめた。


〈 助けて!

誰か、私を助けて…… 〉


私がそう願ったそのとき、血まみれの左手が砂のようにさらさらと崩れて消え去った。


〈 私は、助かったのかしら? 〉


息苦しさから解放された私は、咳込んだあと、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。


でも、なぜあの左腕は消え去ってしまったのか?


私は自分の右手に残るザラッとした感触に気づいて、自分の右手を見つめた。
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