願いは叶う
テレビの方からは、低い女の唸り声が聞こえてくる。


私の頭の中に、十三年前の野沢恵子の記憶がよぎった。


野沢恵子はあの当時、誰よりも幸せだった。


野沢恵子はスタイルが良くて、ミニスカートが似合う、背の高い女の子だった。


野沢恵子は愛する人と結婚し、素敵な家庭を持ち、ありふれた普通の生活をしているはずだった。


もしもあのとき、私さえいなければ……。


『憎しみは消えない……』


低く、うらめしそうな声が、テレビの方から聞こえてきた。


私がテレビの方に目をやると、野沢恵子の生首が、私に対する憎悪を剥き出しにして私を睨んでいた。


『自分だけが、幸せになれると思うな……』


私は浄化の塩を握りしめ、ゆっくりとテレビの方に歩いて行った。


『私は復讐する……。

お前の大切なものをすべて奪う……。

お前に、生まれてきたことを後悔させてやる……』
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