君がメガネを外す時・番外編~結衣ちゃんの恋~
天文部の部室に着くと、もう悠兄は来ていた。
悠兄は天文部の部長だ。
わたしたちは悠兄がいるから3人でこの部活に入った。
……でも、実はわたしはそれだけじゃない。
小学校の頃、悠兄とふたりでしし座流星群を見に行ったことがある。
あの時は美織と洸太はそろって熱を出していた。
初めて見る流れ星に心の中で祈ったのは「悠兄のお嫁さんになれますように」だ。
流れ星を見た喜びではしゃぐわたしを、悠兄は優しい瞳で見守ってくれていた。
星には淡い恋心が詰まっていて、わたしを甘い気持ちにさせてくれるのだ。
物心ついたときからわたしは悠兄が好きで、でもずっとそれを隠して生きてきた。
もし告白して「ただの妹としか見れない」とでも言われたら、わたしは立ち直れるのだろうか。
「悠人(ゆうと)」
そう言いながら部室に入ってきたのは3年生の理香子先輩だ。
呼び捨て。
以前悠兄に告ったけど、断られたと聞いている。