サマーノウト
「…なれると思った」
スマートフォンで音楽サイトを開き、
《サマーノウト》を聴いてみる。
オーケストラが演奏するそれは、風雅な強さと優しさ、繊細さが溢れる曲だった。
一音たりとも変わらない音符。
でも、彼の弾くヴァイオリンの音が聴きたいな、なんて無理なことを考えた。
あの日の彼とはもう二度と、会うことはないだろうから。
そばに寄ってきたマリンを撫で、スマートフォンの電源を切る。
あたしは今も、きっと、
彼だけのサマーノウトに恋をしている。
—end—