8月の雪


「…手術は成功した。
だから、本当ならもっと生きられるの…」

「……だったらなん、で!?」


震える声を押し殺して、俺は尋ねた。


「…再発…したの。」

「さいはつ?」

「なんていうか〜…ようするに、手術が成功したって言えるのは、手術後から五年後。その間に再発すれば、失敗ってこと」


わざとふざけて、芙由は場をなだめようとしている。


そういう空気を作っている俺は、惨めに感じる。

芙由のほうがきっと辛いのに、俺は笑うことも出来ない。


「…って、話重いね…ハハッ…」



















「無理に笑うなよ」


















知らない間に俺は、芙由を抱きしめていた。



強く…強く…
芙由の涙が枯れるまでずっと一…。











「…俺がいるから…ずっと…傍にいるから…」



溢れる想いを抑える術を俺は知らない。



「……今日やるライヴに必ず来て…」



俺の決心は固まった。




小さな体で病魔と戦っている、
芙由を守りたい。







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