8月の雪
こんなにも人を想ったことは、あっただろうか?
今までの俺なら、いろんな理由を付けて、逃げ出してた。
でも、君だから…芙由だから、向き合いたいって思えたんだ…。
『あんたは人を愛せるよ』
なぁ美紗…あの言葉、今なら信じれる気がする。
屋上を下りる階段を下りながら、震える拳を強く握った。
いっきに目頭が熱くなり、前が霞んでいた。
「ふ〜…」
一息つき、溢れそうな涙を腕で拭った後、俺は電話をかけた。
一プルルル…プルルル…
数回のコール音の後、不機嫌そうに電話が繋がった。
『なに!?』
「…えっと〜頼みがあるんすけど…」
『……嫌だ。
お前の頼みは、どうせろくなもんじゃないからな』
今にでも電話を切りそうだ。
それでも俺は、どうしてもやってもらいたいんだ。
…芙由のために。
『はあ〜…分かった。
ただし条件がある』
「なんすか?」
『必ず成功させること』
「…はいっ!
ありがとうございます、流先輩」
言い終わると、俺は直ぐに電話を切り、準備に向かった。
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