8月の雪




一グイッ


「美紗っ!!」


やっとのことで捕まえた腕は、俺すらも拒否るように震えていた。


「……何か、あったのか?」


唾を飲み込み、無視を覚悟に優しく尋ねた。


「………あの人がいた…」


それだけ言うと、美紗はその場に座り込んだ。


ここが裏庭でよかった…。


そんなことを思いながら、俺は美紗の横に膝をついた。


「あの人って、美紗の義理のお父さん?」


何も言わずとも、
さっきより青ざめている顔を見れば、一目瞭然。


…花本の隣にいたのが、美紗の義理の父親、か…。


「…ゴメッ…りつ…」

「…いや、んなこと気にすんな」

「………ゴメッ…」



同じ言葉を繰り返している美紗を、抱きしめたかった。


肩を震わせないている美紗を守りたかった。





でも、出来ない。





俺みたいな汚いやつは、
そんなことする資格がない。




ただ見守ることしか…





俺には出来ないんだ。









…………美紗……















ごめんな





抱きしめることすら


出来ないほど




弱くて一…




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