8月の雪



「…うっ…嘘じゃないよね?」

「何が?」


さっきまで黙り込んでいた美紗は、急に口を開いた。


「だから……あたしが必要、って言ったの…」


上目使いに顔を赤くして、俺を睨んでいる。

そんな顔が愛おしくて、俺は微笑んで言った。


「ば〜っか、んなこと嘘つくわけねぇだろうが」


その言葉に、美紗はさらに顔を赤くする。


繋いでいる手は少し震えていて、俺の手にも伝わってくる。


「…ちゃんと、祐に言わなきゃね…」

「そうだな。あいつが、一番気にかけてたからな」


そうじゃなかったら、今こんな風に、気持ちを伝えてなかったと思う。



あいつは、芙由ちゃんに恋をしてから変わった。


表情とか話し方が、やんわりとしてきた。


だからかな…俺も祐みたいになりたい、なんて思ったのは…。




一ドンッ


「あっすいませっ…ンッ!?」

「あっ…!!」


噂をすれば、なんとやら。


前も見ずに走って来た、俺にぶつかったやつは、紛れも無く…


「お〜祐」

「お〜…じゃねえよっ!
どういうことか説明しろ!!」


俺達二人のことを見て、祐は少し笑っていた。




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