8月の雪
「…穂高君…グスッ…時期が来れば、いつか話すね?
だから、もう少し…待ってて…」
「分かった。
お前が話したくなるまで、
待つな…」
境界線は誰にだってある。
だけど、その線を飛び越えたくて、俺はウズウズしている。
「…お前…って、辞めてよ…」
「はっ!?何いきなり…?」
「さっきは名前だったのに〜」
「…何か、昨日とキャラ違う」
少し呆れながら、駄々をこねる彼女を見て、俺は口を開いた。
「………芙由……」
「…やっぱり穂高君、優しいね…」
俺が彼女の名を呟いた瞬間、
顔を赤くしながら笑みを浮かべた。
「あはっ…何か嬉しいね!?」
「はいはい。あんたってかなり変わってんね?」
「…笑った…」
そう言って、俺の顔をさしている。
気付くと俺は、口元が緩んで笑っていた。
「うっせ…」
「照れてる〜」
照れた顔を見られたくない一心で、
俺は彼女の頭を、髪がグシャグシャになるぐらい撫でた。