8月の雪



「…あ〜何してんだ、俺!?
まぢ、らしくねぇだろ」


人通りが少ない道まで着くと、
俺は足を止めて、自分のしたことを思い返していた。


女に名前を呼ばれるなんて、
別に普通のこと。

逆に言えば、苗字で呼ばれるほうが、
珍しいほうだ。


なのに、彼女が呼ぶのは、
何かが違った。

そこら辺の女とか、美紗や栞に呼ばれる時とは感覚が違う。


彼女が発する言葉、

彼女が笑う、


その一つ一つが、俺を揺さぶる。


ほてった体は、夏の暑さと共に上昇する。


そこはまだ俺にとって、未知の世界。




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