8月の雪


「聞いてたけど、何だか嬉しそうだから…そうなのかな、って」


意味が分からない、
とでも言うように、俺は頭を傾けた。


「そっか…だから最近、楽しそうなのね!
毎日好きな人に逢いに行ってるでしょ?」


一ドキン


あれ、変だな。

ナンダコレ…


芙由の笑った顔が頭に出て来た途端、
心臓の音がやけにうるさい。


「いい傾向にあるのね…」


意味深な笑いを残して、
真美さんは空いた皿を下げ始めた。


「…やっぱり、あんた芙由が好きなんだ」

「はっ!?お前も意味分かんねぇから」

「……ねぇ、それって本当に分からないの?」


鋭い瞳が俺を突き刺す。


分からないものは分からない。

それじゃ、ダメなのかよ。

今まで、ずっとそうやってきたのに…


「…じゃあ何がスキか教えろよ…」


弱々しく出た声は、掻き消されそうだった。

美紗は俺の顔を見た後、それ以上は何も言ってこなかった。




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