8月の雪
《…いつまでも、逃げてたっておばさんは帰ってこないよ?
あの人は昔から、そうだったから…
早く割り切りなよ》
うるさい。黙れ。
《あんたは人を愛せるよ》
その言葉を見た瞬間、
汚いものが出てった気がした。
愛なんてモノを…親の愛情すら受けなかった俺が、
人を愛せるなんて…
ありえないと思ってた。
愛し方も教わってない…
それでも、人を愛せますか?
気付くと頬には、涙が伝っていた。
《目閉じて、深呼吸しながら胸に手あてて。
いつも一番最初に頭に浮かぶのは、
………誰?》
いつも一番に浮かぶのは…
親友の律でもなくて、
幼なじみの美紗でもなくて、
セフレの栞でもない。
思い浮かぶのは…
いつも無邪気に笑っている
誰に対しても、平等の優しさをくれる
君…
まるで華のように笑う
芙由だった
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