8月の雪



否定するのは簡単なこと。

だけど、あたしにはその仕方が分からない。


感情が外面に出にくいあたしには、いろいろ誤解されやすい。


だから、最初は友達がいた高校も
いつの間にか、孤立をしていた。



『…ごめん』



とっさに出た言葉は、肯定とみなされて、
何も交わさないまま、あたし達は別れた。


涙は出てこなかった。


感情に疎いのかもしれない。

それとも、まだ実感がないのかもしれない。



最後のデートは、
哀しくて…切なくて…


途中で逃げ出した。



祐にはまだ連絡がいってない。


たぶん、律なりの気遣いだ。



今日が祐の誕生日だから…


















「じゃあな〜」

「うん。ちゃんと勉強しなよ」

「へいへい」


静かに闇に紛れながら帰っていく祐を、見送った。



大切なものを失った空っぽの心から


初めて涙が溢れてきた。





僕らの歯車は


静かに音を立てながら…



狂いながら…




回り出す。




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