8月の雪
「いってきまーす」
誰もいない家に自然と言葉をかける。
小さい頃、いつ帰ってきてもいいように、必ず言っていた言葉は、
いつの間にか習慣になっていた。
「祐、あたしに話って何?」
「……栞」
外に出ると、
昨日『話がある』と呼び出していた栞がいた。
「祐…はよっ…」
「美紗…はよ」
「…じゃあ、後でね」
雰囲気を察したように、
美紗は何も言わずに、スタスタと歩いていった。
「補習…何時から?」
「10時…」
「じゃあ、近くの喫茶店に入りましょう」
「分かった。」
それだけ言うと、
何も話さないまま、学校付近の喫茶店に入った。
一カランッ
重たい空気を察しながらも、
お互いが避けるように、口を閉ざす。
「アイスコーヒーと紅茶になります」
店員の声と同時に置かれたアイスコーヒーをゴクッ、と一口飲み、
話を始めようとした。
「…あのさ〜」
「いいよ、別れたあげる。」
先に言葉を発した栞の言葉に驚き、目を見開いた。