8月の雪
「…祐…。その子のこと、幸せにしてやんなよ?
っで、あんたも幸せになんな!」
「分かってるよ…」
外に出ると、蝉の泣き声が聞こえて、暑さが増した。
でも、栞の顔は、
そんな暑さも消してしまうほど、清々しかった。
「今度、彼氏に挨拶すんな」
「はいはい。」
「たまには連絡しろよ」
「分かってるよ」
「後っさ…」
「ばーっか」
一ギュツ
いきなり飛び付いてきた栞に驚いて、倒れた。
いつもなら、その場で剥がすのに、今日は出来なかった。
最初から“好き”も“愛”もなかった。
でも、お互いの存在が、支えになっていたのは、
事実だ。
だからなのか、
これからは別々に歩くことを、
淋しいと思うのは…。
「バイバイ、祐」
「幸せにやれよ、栞」
今日が最後…
でも、
今日が始まり…
俺は栞と別れて、
真っ直ぐに歩き出した。
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