8月の雪
「っつか、何で美紗あんな前にいんの!?」
いつも律の前後にうり美紗が、
今日に限っては、なぜか遠く離れている。
横目で律を見ると、少し困った表情をしている。
「……美紗から、聞いてない?」
「何を!?」
「はぁ〜…実はさ」
少し間を置き、真剣な律の瞳を見た。
「俺、美紗と別れた。」
静かに告げた律の表情は、
揺らぐことなく、配られている答案用紙に目を移す。
それをただ呆然と俺は見ていた。
頭は真っ白になり、紙になんて書いたかなんて、覚えてない。
ただ、今律が言った言葉が、
頭をグルグル回る。
何で、気付かなかったんだろう。
今思えば、変なところは沢山ある。
芙由と初めて逢った日のときのことや、
メールのことだって。
最悪だ。
自分のことが精一杯で、周りが見えなくなっていた。
俺達三人は、この日初めて別々に帰った。