8月の雪
「…じゃあっ行くなら、教室掃除して。」
「はいはーいっ」
適当に返事をしながら、
掃除用具入れからほうきを出して、掃除を始める。
「美紗の友達って、男?女?」
「女の子だけど?
なんか文句ある!?」
「いやっ何もないけど…」
「あっそ…じゃあ、あたし日誌出してくるから、先に昇降口に行ってて」
俺の返事を聞かずに、
書き終えた日誌と鞄を持ち、教室を出ていった。
静かになった教室は、
運動部の活気が溢れる声と、蝉の雑音が響き渡る。
瞬間、
真っ暗な闇が支配しそうになったが、すぐに我に還り、
何にも入ってない鞄を持って、教室を出ていく。
独りになると、どうしても闇に覆われる。
だから、いつも誰かの隣に居たいがために、俺は栞の浮気を勝手出た。
相手なんて誰でもよかった。
恋とか愛とか、
俺には無関係なことだったから…
…今日までは。
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