8月の雪


「…じゃあっ行くなら、教室掃除して。」

「はいはーいっ」


適当に返事をしながら、
掃除用具入れからほうきを出して、掃除を始める。


「美紗の友達って、男?女?」

「女の子だけど?
なんか文句ある!?」

「いやっ何もないけど…」

「あっそ…じゃあ、あたし日誌出してくるから、先に昇降口に行ってて」


俺の返事を聞かずに、
書き終えた日誌と鞄を持ち、教室を出ていった。


静かになった教室は、
運動部の活気が溢れる声と、蝉の雑音が響き渡る。


瞬間、
真っ暗な闇が支配しそうになったが、すぐに我に還り、
何にも入ってない鞄を持って、教室を出ていく。



独りになると、どうしても闇に覆われる。


だから、いつも誰かの隣に居たいがために、俺は栞の浮気を勝手出た。

相手なんて誰でもよかった。


恋とか愛とか、

俺には無関係なことだったから…





…今日までは。




< 5 / 111 >

この作品をシェア

pagetop