8月の雪
「ってか、あいつ遅くねぇか!?」
「そろそろ来るんじゃないの〜」
一ドキッ
不意に脈打つ心臓。
文句を言いながらも、実際は楽しみにしていた。
いつもよりワックスを使って髪を立たせて、
最近買った新しい服を着て来た。
結構気合いを入れてたりする。
「ごめーん!待った!?」
一…ドクンッドクンッ
俺の心臓の音は、これでもかってぐらいうるさくて、聞こえるんじゃないか?
って、ヒヤヒヤしている。
「おっせーよ」
「だから、ごめんって言ってるでしょ?
しょうがないじゃない!美優の忘れ物届けてたんだから」
それが人に謝る態度かよ。
なんて言葉が喉まで上がってきたけど、
ツバと一緒に飲み込んだ。
これから遊ぶって言うのに、変な茶々を入れて、気分を害したくない。
「まあっいいじゃん!
せっかくタダ券あるんだから、早く入んないと損だよ?」
「…それもそうね?
じゃっ早く行こう!あたし、ここの遊園地、初めてだから楽しみにしてたんだ」
満面の笑みを見せている彼女と一緒に、俺は園内に入った。