8月の雪



「…落ち着いたか?」

「…ズッ…うん、ごめんね遠山君。」


鼻をすすりながら、あたしはハンカチで涙を拭く。


冷静になって考えてみると、
いきなりこんな風に泣いたら迷惑だ。


自分でも恥ずかしいことをしたと思う。


「…金井…あのさ…」

「………」



もしかして、泣いた理由聞く気!?

何て答えたらいいか分かんないっ!



珍しくあたしの心拍数は、増すばかり。


「…あのさ…金井って…祐が好きなのか??」


「はいっっ!?」


意外な質問に驚いて、あたしは変な声を出してしまった。


「いやっ…栞先輩と二人でいたから泣いたのかな〜
って、思って…」


少し顔を赤くしながら、遠山君はあたしに言う。


「…祐とあたしはただの幼なじみ。それ以下でもそれ以上でもない、家族みたいなやつ…」


遠くにいる仲むつましい家族を見ながら言う。


本当の家族ならどれだけ楽なんだろう。



あたしの記憶も…


祐の記憶も…


全部を半分個に出来るかもしれない。



そう思う半面、
祐にはあんな思いをしてほしくない。


そう思っていた。




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