8月の雪
でもその時のあたしは、
芙由を好きになるまでの祐と一緒で、
人を好きになることを拒否していた。
だからあたしは、
嬉しかったくせに…
胸がざわついたくせに…
『ごめんなさい』
たった一言で片付けた。
でもあなたは食い下がる事なくあたしに接した。
どうしてあたしなんだろう。
あなたの周りにはもっといい子がいるのに…。
そんなことを頭で思いながらも、あたしはあなたに惹かれていった。
でも、あなたを想えば想うほど、
あたしにあの時の記憶が降ってくる。
『お前なんかいなければっっ』
そう言ったあの人の顔が、
頭に張り付いて消えなくなっている。
毎晩眠るときに、
もしこの場所がばれたらどうしよう。
あたしがしたことを、ものすごい剣幕を立て怒るだろう。
殴ったり蹴ったり…
消えることなく残っている、あの人の罪の傷。
この傷のせいであたしは、人を拒否するようになったんだ。