8月の雪



「金井っ今日一緒に帰ろうぜ」

「お断りします。」

「またまた〜そんなこと言って〜」


はぁ〜、とため息を漏らしながら、仕方なく遠山の隣を歩く。


この数日の間で、あたしは彼のことを皮肉を込めて、遠山と呼ぶようになった。


ここまですれば、少しは懲りるかと思ったけど、
そんな考えは甘かった。


「…金井〜聞いてるか!?」

「遠山の話って、前にも聞いたことあるの多いよ…!
内容が分かってるから、つまんない」


我ながらひどい言い草。


そんなこと本当は思ってないくせに、
思ってます的な物言いをする自分が嫌いだ。


でも怖いんだ。

また人から拒絶されるのが。



あの時のあたしは、
人を信じようとしないで、距離を置いていた。


母さんも…芙由も…



祐でさえ…。




あの頃だった。



あたしがあの子と出逢ったのは…。




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