8月の雪




「…美紗!?」


話終わったときには、
自然と涙が溢れていた。


「俺さ、思うんだけど…律はまだお前のことが好きなんじゃないのかな…?」


あたしに淡い水色のハンカチを渡すと、またぼんやりと祐は空を見る。


「……律は、あたしがあんたのことを好きだと思ってる。
曲がり間違ってもそんなことありえないのに、ね…」


なのに、あたしはその手を離した。


また拒絶をされたら。

そう思うと、足がすくんで、前に進むことが出来なくなった。



涙と一緒に笑いが込み上げてくる。



結局、あたしはあの人と同じだ。



「…ムカつく。」

「………」


あんな人と同じということが、これほど嫌なものなのに、
どうしてあたしは律を信じられなかったんだろう。



こんなあたしを受け止めてくれたあなたを…







心のどっかで疑っていた。







< 70 / 111 >

この作品をシェア

pagetop