8月の雪
『…別れよう。俺、もう堪えらんないよ』
ゆっくり顔をあげると、律は真剣な瞳であたしを見ていた。
「ぁっ…ッ…」
言葉を失った。
頭は真っ白になり
ただ音を聞いていた。
「…美紗が本当に俺のこと好きか、分かんなくなった」
今にも泣きそうな震えている声。
こんな風にさせたのは、あたし?
律はあたしのことが好き。
あたしも律が好き。
そんな風に思っていたから、何をしても大丈夫と思っていたあたしの、おごった気持ちがあったから?
ずっと…溜まっていた感情は、こういう形で表させたも、あたしが悪いんだ。
「ホントは祐が好きなんじゃねぇの?」
自分ではなんて答えたか分からない。
絶望感とか喪失感…
込み上げてくるものを抑えるようにして、
吐き出した言葉。
「…ごめん。」
本当は、
『…ごめん。そんなこと思わせるつもりなんて無かった…』
そうやって言おうと思ったのに、
後の言葉は、詰まった勢いで飲み込んでしまった。
あたしは馬鹿だ。
どうして…
どうしてあんな優し人を傷つけたんだろうか…。
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