8月の雪
一ガラッ
「…あなたたち、まだいてくれたのね」
沈黙を破るようにして、芙由の母親が出て来た。
「あのっ芙由ちゃんは…」
「だいぶ楽になったみたいで、
今はグッスリと寝てるわ…」
「そう…ですか」
ハァッ、と息を吐きだし、胸をおろした。
さっきまで絡み付いていたものは、少しずつ取れていく。
「…律君…そっちの子は見かけない子だけど…もしかして、祐君?」
「あっ初めまして!穂高祐です」
「初めまして。芙由からいつも話は聞いています…
あの子の今の、生きる力だって…」
芙由の母親が言ってる意味がよく分からなかった。
「…じゃあっ明日また来ます」
「ありがとうね」
そう言って笑った顔は、芙由に似ていたから、俺は何も聞けずに、律の後ろを歩いていった。
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