8月の雪
『1年3組、CafeDollお願いしまーす』
あっちこっちに散らばった宣伝係の声。
その声が聞こえたと同時に、オープンする。
「祐〜僕等何でこんなかっこしなきゃいけないの?」
「うちのクラスのボスに聞け」
俺と棗は、誰が見ても分かるように、不機嫌な顔をしている。
その理由は、
「ちょっとー祐、棗!あんた達もっとにこやかにしなさい!
うちは笑顔が売りの人形喫茶なんだから…」
誰が考えたのかは知らないが、
気付いたら、コスプレをした店員が、客をもてなす、
そんな変な喫茶店になっていた。
「ボス〜何で俺等これなの?」
「ホントだよ。何で祐はいいとして、僕までこんなかっ」
「女性ウケがいいから。」
「「はっ!!?」」
黒縁眼鏡を左手の人差し指であげながら、
ポカーン、とした俺達の顔を見る。
「一応、このクラスで断トツかっこいいから、
今流行りの執事にしたんだけど、何か不服?」
有無を言わさぬその顔に、俺達はただ首を、横に振ることしか出来なかった。
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