8月の雪


「久しぶり、祐」

「…お前、もう大丈夫なのかよ!?」

「大丈夫だから学校に来てるんでしょ?」


いつもと変わらない口調と態度。
久々に逢った美紗は、少し明るくなっていた。


「美紗はうちのクラスの稼ぎ頭になってもらうから。
男二人分はいくでしょ」


パチッパチッ、とそろばんが見える。

たぶん安西は、美紗を使って俺達を働かせようとしている。

それが分かってるからこそ、ため息が出て来る。


「…分かったよ。やればいいんだろ?」


口を尖らせた棗が言った。

それをしっかり聞いた安西は、またニタリ、と不気味な笑みを浮かべて、裏片の仕事にまわった。


「…あっ、えと〜花本君、これ」


メイド服のポケットから、一枚のハンカチが出てきた。


「あっいいのに!僕が貸したくて貸したんだから」

「でも、花本君のだから…」


苦笑いを浮かべながら、美紗は棗にハンカチを手渡した。


そんな二人を見ながら、俺はただ首を傾げるばかり。





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