8月の雪
「祐っ」
不意に聞き覚えのある高い声が、俺の背中から聞こえた。
「えっ……!?」
「美紗に呼ばれて来ちゃった」
そう言って、満面の笑みを俺に見せる。
なんだか、もうずっと君を見てなかった気がした。
気が遠くなるような時間の間、
君をただひたすら想っていたような気がした。
「おかえり…芙由…」
自然と頬が緩み、笑顔が溢れた。
それを見た芙由は、また優しく笑った。
「もう体は平気なのか?」
「うん。ただの過労だって〜」
「じゃなかったらこんな所、呼ばないわよ」
「お前な〜」
俺と美紗の会話を聞きながら、芙由は楽しそうに声を出して笑っている。
「じゃあ…後はよろしくね、芙由」
はっ!?
「分かった〜」
おいっ、ちょっと待て
「芙由」
俺は芙由に腕を引かれ、人込みを掻き分けて、屋上に向かった。
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