8月の雪


「…かない、さん…?」

「いやっ!!」


一バシッ


とっさに近づいてきた手を払いのけた。


「あっ…ごめんっ」


我に返ったときは、もう遅かった。


花本君は驚きを隠せない様子で、あたしを見ている。


「…ごめん、嫌なこと思い出させたよな?」


一…えっ?


花本君の言った言葉の意味がよく分からない。



「…実は、金井さんの親父さんって、俺の父親なんだ…」



一………嘘…!?

何を言ってるの。


あの人と花本君が、親子?



「あっ……はな」

「探したぞ、棗」


あたしの声と被さるようにして、高いところから声が聞こえた。


悪夢が蘇ってくる、声が…。

「……みさ…」


なに一つとして変わってないその人を見るのが恐くて、
あたしは何も言わずに走り出した。


人にあたりながら…花本君の叫び声を遠くで聞きながら、
ひたすら真っ直ぐに走った。


一ドンッ


「……り…つ…グスッ…」

「美紗、なに泣いて!?」


何人もの人の中、あたしは律にぶつかった。


留まらない涙を見られたくなくて、またあたしは走り出す。




微かに動き出した未来と共に一…。




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