8月の雪


「私ね、生まれた時から心臓が悪いの…」


ポツリ、ポツリ、と芙由の言葉が聞こえる。


「小さい頃なんかは、一歩も外に出れなくて、よくあの病院から抜け出してた。
まあそのたんびに嶋さんに怒られてたんだよね〜」


時折ふざけた言葉を入れているのは、
もしかしたら俺に話すのが怖いから?


話さなくていい。


それは、思ってるだけで、言葉には出来ない。


俺自信が芙由を受け入れたいから…芙由の覚悟を聞きたいから。


そんな理由を付けながら、
黙って芙由の話を聞く。


「…それでね、中2の時、手術を受けることになったの。
失敗したらその場でアウト…成功しても、5年以内に再発したら、ただ死を待つのみ
それが怖くて、何度も病院を昔のように抜け出してた。」

「そんなある日、あの湖で、一人の男の子に逢ったの…」


一…トクンッ


小さく鳴った。

それは微かで、俺は気付かないで、そのまま話を聞いていた。




< 97 / 111 >

この作品をシェア

pagetop