8月の雪
「私ね、生まれた時から心臓が悪いの…」
ポツリ、ポツリ、と芙由の言葉が聞こえる。
「小さい頃なんかは、一歩も外に出れなくて、よくあの病院から抜け出してた。
まあそのたんびに嶋さんに怒られてたんだよね〜」
時折ふざけた言葉を入れているのは、
もしかしたら俺に話すのが怖いから?
話さなくていい。
それは、思ってるだけで、言葉には出来ない。
俺自信が芙由を受け入れたいから…芙由の覚悟を聞きたいから。
そんな理由を付けながら、
黙って芙由の話を聞く。
「…それでね、中2の時、手術を受けることになったの。
失敗したらその場でアウト…成功しても、5年以内に再発したら、ただ死を待つのみ
それが怖くて、何度も病院を昔のように抜け出してた。」
「そんなある日、あの湖で、一人の男の子に逢ったの…」
一…トクンッ
小さく鳴った。
それは微かで、俺は気付かないで、そのまま話を聞いていた。
.