アメとブタ女(短編)
ピアノの音が小さくなり、伴奏が終わる。
「……っ!! アキ! 今、すっごくよかったよね?」
歌い終わるなり、ユイカが抱きついてくる。
思わず私も抱きしめ返そうとしたけれど、気持ち悪がられそうなので、やめた。
私が笑顔で返すと、ユイカは満足そうな顔で息を吐き出した。
正直、私も今回はうまくいったと思った。
まあ、全体合唱じゃなくてパート練習だから、意味はあまりないけれど。
もともと歌のうまいユイカがソプラノにいるだけで、引っ張られてうまくなるんだ。
他のソプラノのメンバーも顔を赤くしてハイタッチをしている。
皆が合うと、皆で同じ気持ちになる。やっぱり合唱って最高だ。
もう練習も終わりに近い。
アメの時間がやってくる。