アメとブタ女(短編)
「……うん、今日は調子いいじゃない!」
アルト、テノール、バスパートと共に歌い、ハーモニーを先生に聴いてもらうと、顧問の西口先生は髪を振り乱して喜んだ。喜びのあまり、西口先生のヘアピンが床に落ちる。
「あら、ごめんなさい。それにしても今日は調子がよすぎるくらいね。じゃ、ご褒美あげよっか!」
ところどころから歓声があがる。主に男声パートからだ。
先生は音楽室の戸棚から袋を取り出し、アメを出した。
「アメだー!」
「なんか贅沢な気分……」
歓声がさらに大きくなる。
皆、アメがもらえることよりも「学校で」アメを食べることが特別な気がして嬉しいのだと思う。
「まあ、希望制だからアメがいらない人はいいよ。欲しい人は一人一個。お菓子のごみが廊下にあると校長がうるさいから、アメのごみはしっかり袋に入れること!」
「はーい」
皆が返事をする。
「それと、のどに詰まると危ないから、アメをなめ終わるまで音楽室から出ないこと!」
先生は練習を今日はこれで終わることを付け足して、音楽室を出て行った。