アメとブタ女(短編)
「……さ、……って」
廊下にヒビヤの声が響いている。まだ、校舎内にいる。
階段を急いで下りて、生徒玄関のほうへ向かう。生徒玄関前の廊下に、ヒビヤの後ろ姿が見えた。見えたんだ。
ユイカと一緒にいるのが見えた。
二人はそのまま生徒玄関へと向かう。
私はなんとなく見てはいけないものを見てしまった気がして、ユイカ達の近くの靴箱まで行き、息を潜めた。
「にしてもヒビヤ、考えたね」
「ん? あぁ、罠のこと?」
罠。罠っていったい何のことだろう。
「はーあ。ホント、バカじゃないの。あのブタ女」
ユイカがしかめっ面をする。
「おい、失礼なこと言うなよ。アキが可哀想だろ」
そのユイカの頭をヒビヤが撫でる。
ブタ女。アキが可哀想。アキ、アキって誰?
アキは私だ。アキ、ブタ女。私、ブタ女?
「ふふっ、毎回お疲れ様。あーんなブスにアメあげるなんて、神経すり減っちゃいそう!」
「別に好きでもなんでもないし、そんなに苦でもねえよ。楽でもないけどな」
言葉が刺さる。