アメとブタ女(短編)

「アメをなめ終わらなきゃ、音楽室から出られない。このルールを利用するなんて、私には思いつかなかったよ!」

「ん、ユイカのためなら、いくらだって思いつくから」

 そこまで話して、ドアを開ける音がした。二人の声が遠ざかる。
校舎の外へ出たんだ。二人きりで。

 私はへなへなとその場に座り込む。
信じられない。ブタ女なんて単語を言うなんて。
私を、ブタ女だと言うなんて。

 今みたいに、ヒビヤはユイカと帰りたかった。だけど私がいつもユイカと帰るから二人きりになれない。
 あの様子だと、ユイカ、ヒビヤのことが好きなんでしょ。
利害の一致。私が邪魔。

 だから自分たちはアメをなめずに私にだけ……。

 アメという罠で、音楽室という檻に、ブタ女という私を閉じ込めるために。
面白い。面白いなあ。

 面白いと思っているはずなのに、涙は次から次へとあふれてきて止まらない。
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