海恋
あたし、この高校では、裕くん以外、男友達がいないし、喋った事もない。
「あっ、もしかして、忘れちゃった?
隣の席の名前見なかったの?」
全く図星な事を言われて、あたしがコクリと大きく頷くと、男の子が『そっかそっか』と笑いながら、名前を言った。
「…オレ、田中 陸だよ」
「………………えっ?」
田中………陸?
…って、まさか……
「えええええええーーーーーー!!」
あたしの叫び声が、教室中に響いた。
教室がシンと静かになる。
リコは、驚いた表情で目を見開き、こちらを見ている。
他の人達も、パチパチと瞬きを繰り返し、驚きを見せている。
「あっ、あの、その...ごめんなさい」