海恋
そんな低い声が背後から振って来て、バッと振り返ると、陸くんが、怖い表情をして立っていた。
「陸くん…」
「はぁ?
誰だか知らんけど、邪魔す……」
「うるせーよ。
離せっつってんだろ? 聞こえなかったのか?」
低い声で淡々と話す陸くんの焦げ茶色の瞳は、とても冷めていて、裕くんを見る視線が、あり得ない位冷たかった。
こんな表情の陸くんを、今まで見た事がなくて、唖然となってしまった。
「…お前なんかに、関係ないさっ!
うにげぇーやさから、邪魔しないで欲しいさ……うっ」
「あっ...」
陸くんがズカズカと近付いて来て、あたしの腕を無理矢理突き放すと、裕くんをすごい勢いで突き飛ばした。