海恋
その隙に、あたしは素早く、陸くんの背後に回り込んだ。
小学生の時とは大きく変わった、逞しくて広い背中。
そして、あたしを庇うかのように、伸ばされた長い腕。
陸くん...。
陸くんって、そんなに頼もしかったっけ…?
陸くんの背中って、こんなにも広くて、安心出来たっけ…?
とりあえず今は、陸くんの背中にしがみついた。
とにかくあの時は、怖くて怖くて。
たまらなかったんだ。
「…貝橋、怖かったよな?
大丈夫か? 可哀想に...」
「陸くん…っ」
さっきとはうって変わって優しい声色の陸くんに、胸が熱くなった。
ドキドキドキ。 高鳴る鼓動。